制作の小名です。実は5月に劇団内でワークショップを行いました。共同主宰の松尾が「古武術」のワークショップに赴いたそうで、その内容を皆でやってみようという感じです。「古武術」。先生の教えによると、例えば、敵が頭上から剣を振り下ろしてきたときに、避けようとすると失敗するが、絶対に避けないという覚悟を決め、避けることを忘れるようにすると、なんと避けられるのだそうです。そしてこれを習得するには何年もかかると。何の話だ、という気がするかもしれませんが、かつてこの秘技をすぐに成功させたのが、歌舞伎役者の市川海老蔵で、彼は避けるとき、というかまあ、避けるときに、いつもやっている歌舞伎の足さばきで体を動かしたらしいです。そうしたら結果的に避けたんですね。

簡単に強引にまとめると、「やろうとしている意志している当の行為は、直接には、また完全には実現できない」ということになります。こう考えると、なんだか実感が湧くところもあるのではないでしょうか。集中しているときに限ってできないみたいな。ありますよね。というかそういうものです。あるんですよやっぱり。ただまあそうすると、演技、少なくともいい演技をするにはどうしたらいいのでしょうね。どうすべきかというか、結局どう見えるかだとは思うのですが。つくづく役者って大変そうだな、いや、大変そうだな、と思った次第です。

写真はワークショップとは関係ありません。最近の、ある日の稽古帰りです(松尾、東、古館)。3人とも「微妙、微妙」と口を揃えていたので、載せてしまいました。なるほど、皆捉えどころのない微妙な表情をしていて、とても自然に不自然です。